※電離箱式放射線サーベイメータ ICS323-C
これは、ブータンでは初めて使用される装置で、文字通り放射線量を測定する事ができるものである。
今回、これは病院の放射線使用室の放射線漏洩線量測定と、現地技師の放射線管理に対する意識改革に役立てる為に、JICAに申請し購送して頂いた。
日本では『電離放射線障害防止規則』により、放射線に関する様々な規則が定められている。
・X線装置の漏洩X線による実効線量が3ヶ月につき1.3mSvを超える恐れのある区域を管理区域と定めること
・管理区域の標識と、X線装置の取扱注意を箇条書きにした掲示板を掲示すること
・管理区域に立入る者は、フィルムバッチ、ポケット線量計等の被曝測定用具を装着すること
※その結果を、記録を残し30年間保存すること
・管理区域境界の漏洩X線の測定を6ヶ月に1回行うこと
・管理区域に立入る者の健康診断を6ヶ月に1回行うこと(白内障に関する眼の検査、皮膚の検査は3ヶ月に1回)
※その結果を、30年間保存・所轄の労働基準監督署に報告すること
・X 線装置の外壁の漏洩線量を測定する為に必要なサーベイメータをそなえること
…
と、ここには書ききれないが、日本では放射線管理に関する規則が山ほどある。
だが、ここブータンには一つも無いのが現状。かといってどこかの国の法律に準じているわけでもない。
自分がブータンに派遣される前は、この装置は放射線を扱う施設で主に使用されており、一般人にはあまり馴染みの無いものであったはずだ。
それが東日本大震災以降、原発からの放射線漏洩・一般市民への無用被曝が報道された事がきっかけとなり、多くの人に購入され、各自で放射線計測が行われた。
その為、日本では今でも品薄の状態が続いており、購送に時間がかかった。
「装置がブータンに無事到着した」と、職場に報告すると「メディアに取材してもらい、ブータン国内に報道してもらおう!」という展開に。
3日後には、保健省にてJICA側から病院側への寄贈式が行われ、テレビ局(BBS)・新聞社(Kuensel)も駆けつけた。
病院の放射線科では、その届いた装置にやや興奮気味!
みんなで初めて見る装置を触ってみたり、取り扱い説明書を読んだりしていた。
今後、所属のCT検査部門の放射線漏洩測定から始めたいと考えている。
その準備とし、CT技師のリーダーであるゴパールと病院の設計図を探し、放射線使用室周辺の部屋を把握した。
次に、今までインドのCT装置エンジニアの「操作室は安全だ!」という言葉を信じ、フィルムバッチを装着していなかったCT技師にも、これを機に装着を再度促し、申請書類に記入してもらった。
※現在、レントゲン技師のみが装着しており、インドの測定会社と契約・三ヶ月毎の測定を行っている。
ブータンでも桜が咲き始め、長く寒い冬が明け、温かい春に季節は変わろうとしている。
新しい事を始めようとするには、ちょうどいい季節。
ブータンでの最後の活動がスタートしようとしている。ブータンも少しずつ変わる必要がある。
個人的には、殆ど変わる必要がないと思うのだが。仕事となると話は別。
自分と同じ診療放射線技師の資格を持つブータン人は、去年9月にインドの大学でトレーニングを終えたこの二人だけ。
この二人は参加当初から「放射線測定器がブータンに無い事、技師たちが放射線に対する危機感を持っていない事」を自分と同じ様に疑問視していた。
<今後の実施項目>
・放射線使用室の漏洩線量測定
・撮影室レイアウト・防護設備等の変更
・ポータブル撮影時の被曝線量測定
・各県病院のレントゲン室の漏洩線量検査
・全国放射線科ミーティングで放射線量測定器の必要性と取扱い講習(現地技師のみで)
・定期的な漏洩測定測定(現地技師のみで)
残りの実質活動期間は2ヶ月間。
自分が抜けた時の事も視野に入れながら、現地技師主体で自分はサポートする形で残りの活動をして行こうと考えている。
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