2011年2月15日火曜日

仕事の事 <症例紹介>

症例紹介…『NCC』

ここブータンには、この『NCC』患者が多くいる。

MRI検査でも、この疾病を疑われた患者が1人/1日はいる。

検査に参加したばかりの頃、私はこのNCCという疾病を知らなかった。

調べてみると、それは 『Neurocysticercosis』 という病名だった。

日本名…『神経有鉤嚢虫症』

って全然聞いたことない…。日本で経験したことのなかった症例だった。

更に『Neurocysticercosis』について調べてみた。

<疫学>
・日本では稀だが中南米、東南アジアを中心として世界中に広く分布。
・中枢神経系の寄生虫感染症としては最も頻度が高い。
・有鉤条虫の幼虫である有鉤嚢尾虫の頭蓋内感染によって生じる。
・生、不完全に調理された豚肉、虫・卵に汚染された水・野菜が感染源。
※ブータンでは、特に東部に多いようです。

それもそのはず、途上国ではこのような寄生虫に対する対策が出来ていないのが現状だからだ。
それに「肉を半生」で、「野菜を洗わず食べる」と言うことがよくある。
「生水をそのまま飲む」ということはあまりしないだろうが、「歯磨きのうがい等」は普通の水でやってしまうので完全に感染を防ぐのは難しいように思う。

<寄生場所>
・消化器以外にも全身各所に嚢虫を作る。
・中枢神経系では脳や脊髄実質、髄膜、脳室上衣、脈絡叢に感染。

<症状> (すべて非特異的)
 痙攣発作、局所神経症状、水頭症による頭痛、精神異常など
※『てんかん』 を疑われて検査依頼されることもあります。

<脳実質の感染巣の経過>
虫嚢の成熟変性石灰化

これにより、MRI画像上でも変化がみられるようだ。

成熟
・嚢胞、原頭節、壁の増強効果(-)、浮腫(-)
(内部はT1WI 低、T2WI高信号変化 )

・浮腫、リング状増強効果
変性
・結節状の増強効果
石灰化
・CTで顕著


『NCC』の画像紹介

<症例1 進行したもの 43歳・男性>
※DrからのMRI依頼伝票をご参照くださいw
※右下の「月日」の殴り書きが、検査予約時に各技師が患者の為に書くものです。

・症例画像 その1 …MRI画像(T2)

・症例画像 その2 …同部位のMRI画像で比較 
            (左上からT2、T2FLAIR 左下からT1、T1造影)

・検査結果
※現地Drが書いたレポートをご参照下さいw


<症例2 石灰化 8歳・男児>
※DrからのCT依頼伝票をご参照下さいw

・症例画像 その1 …CT画像
※左の画像では少し見にくいですが、左側頭骨周辺をよく見て下さい。

・症例画像 その2 … CT画像とMRI画像(T2、T2FLAIR)の比較
※CT検査後、NCCが疑われたので、直後にMRI検査を実施しました。

<まとめ>
日本では、稀な症例のため確定診断には時間を要するが、ここブータンではNCC患者が圧倒的に多いため、主訴とMRI画像でほとんど診断がついているようである。
ブータンに来てから、頭部MRI画像上で神経系に単発・多発するリング状・結節状増強効果を、またはCT画像上で石灰化が認められる場合には、『NCC・神経有鉤嚢虫症』も鑑別の一つとして考えるようになった。

※画像はデジカメで撮影したものなので、画質を正確に表現できていないかもしれませんがご了承下さい。

4 件のコメント:

  1. ぐわぁ~寄生虫きめぇぇぇぇ
    てか、Drのレポ全くわからんww

    tmd

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  2. 久々の投稿だす

    確かに依頼伝票読めねw
    寄生虫で脳やられるとかすげえなぁ
    NCC恐るべし!

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  3. >TMDさん
    他の寄生虫ですが…自分達隊員は皆「ランブル鞭毛虫」をお腹の中に飼っているかもしれませんw
    これにより、「ジアルジア症」になり、激しい下痢に襲われますw

    Drのレポートは、最初は全く分かりませんでした!
    って、今も分からないところがありますがw

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  4. >X-menさん
    依頼伝票が読めないとオーダーを理解できないので撮影意図が読めません…本当に辛いです…。
    今は、全てではないですが部分部分を解読し、同僚に聞いてから撮影をしたりしています。

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